ADHDにおける障害年金申請のポイント
この記事の最終更新日 2022年7月5日 文責: 社会保険労務士 大平一路
ADHD(注意欠陥多動性障害)は一昔前であれば疾病と見なされていなかったのですが、最近では広く認知されており、障害年金を受給する方も増加しています。
しかしながら、実際に職場で疾病について理解してもらい、配慮していただいているというケースはまだまだ少なく、ストレスから症状が悪化するケースも多くなっている現状があります。重症化を防ぎ、そして活躍の場を広げる為にも今後更なる認知度の向上が必要であると考えます。
本ページでは、ADHD(注意欠陥多動性障害)のために就労や日常生活に影響が出ている方が、障害年金を受給ための要件をお伝えしたいと思います。
ADHD(注意欠陥多動性障害)における認定基準
ADHDは発達障害の一種で「多動性」「不注意」「衝動性」が主な症状です。
例えば、
・落ち着きがなく、じっとしていることが出来ない
・ケアレスミスが多い
・気が散りやすく、一つのことに集中することが苦手・集中力が持続しない。
半面、自分が興味あることには過度に集中してしまい時間の管理が出来ない。
・忘れ物が多い
・整理整頓が出来ない
・順序立てて仕事を進めていくことができない。
・時間管理が苦手で、約束や期日が守れない
・思ったことを衝動的に口にしてしまう。
・衝動買いをしてしまうことが多い
といった症状があります。
ADHDの原因は、前頭葉の働き方や脳の神経伝達物質(ドーパミンやのルアドレナリン)の異常等の説がありますが、まだ解明されていません。
治療法としては薬物療法や心理療法による治療が行われています。
ADHD(注意欠陥多動性障害)で障害年金を受給するための3つのポイント
1、初診日の確定
初診日の証明が取れること初診日とはADHDのために初めて医療機関を受診した日のことです。
原則として、初診日を医療機関に書面で証明してもらう必要があります。
もし、既にカルテが破棄されていたり、医療機関が廃業していた場合等、証明を記載して貰えない場合は、何らかの方法により初診日を特定する必要があります。
2、納付要件
初診日の属する月の前々月の時点で納付要件を見たいしていること。
原則として、初診日の前々月分から20歳までの間に3分の2以上納付していればOKです。
例えば、初診日が10月10日であれば、前々月の8月分から20歳まで遡って年金が納付されているか否かを確認することになります。
3分の2以上納めていない場合は、初診日の前々月までの1年間の保険料が全て初診日の前日迄に納付されていれば納付要件を満たすことになります。
例えば先程の10月10日が初診日だった場合、前々月の8月から昨年9月までの1年分が初診日の前日である10月9日迄に収められていれば納付要件を満たすことになります。
なお、社会保険に加入している期間は納付したことになりますし、会社員の配偶者である場合なども、実際には保険料の支払っていなくてても納付したことになります。
また、納付していなくても、免除申請を行っている場合も納付したものとして取り扱われます。
ただし、免除の申請をした日等によって、要件を満たさない場合もあるので、申請する際は必ず確認するようにしてください。
3、障害の程度
初診日から1年6ヶ月経過した日または今現在、障害の程度が年金機構の定める障害等級に該当すること。
障害等級は1級から3級まで定められており、1級が最も重い等級です。なお、3級は障害厚生年金または障害共済年金の場合のみの等級となりますので、障害基礎年金の場合は1級または2級に該当する必要があります。
(どの年金に該当するのかは、初診日に加入していた年金が適用されることになります)
障害等級1級~3級の目安
下記のとおりとなります。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
3級は働くことに制限がある状態、
2級は日常生活においても援助が必要な状態、
1級は常時介護が必要な状態といったイメージになります。
また、日常生活は次の7つの状況を判断することになります。
・適切な食事
・身辺の清潔保持
・金銭管理と買い物
・通院と服薬
・他人との意思伝達および対人関係
・身辺の安全保持及び危機対応
・社会性
ADHD(注意欠陥多動性障害)における障害年金申請のポイント
障害年金は主に医師が作成する診断書と自身で作成する病歴・就労状況等申立書により判断されることになります。
診断書は医師が記載するもので、医師以外の人間は一切記載・修正等行うことは出来ません。
申請者が出来ることは、医師が自分自身の現状を反映されている診断書が書きやすいように、しっかりと状況を伝えることです。
普段生活しているなかで、どのような症状が出現しているのか?日常生活や職場ではどのような状態になっているのか?出来るだけ正確な情報を医師に伝えることが大切なのです。
病歴・就労状況等申立書は自分自身で作成することになります。発病から現在までの症状や日常生活で不自由となっていること、就労の状況などを記載します。診断書の内容と異なっていないか注意が必要です。
なお、発達障害の場合は出生した日から現在までの状態を記載する必要がありますので、併せてご注意ください。
また、出生日から5年以内に区切って記載する必要があります。
また、受診する病院が変わったり、大きな変化があった場合は5年以内であっても区切って記載するようにしてください。
ADHD(注意欠陥多動性障害)における障害年金受給事例
「ADHD」(注意欠陥多動性障害)で障害厚生年金3級を受給できたケース」
相談者:男性(30代)/無職
傷病名:ADHD(注意欠陥多動性障害)
決定した年金種類と等級:障害厚生年金3級(事後重症請求)
年金額 月額約50,000円
相談時の相談者様の状況
幼少期より落ち着きがないといわれており、大学では講義を最後まで聞く事ができない状態でしたが、当時は発達障害やADHDという概念はなく、性格的なものだと家族も思っていました。
しかしアルバイトではミスが非常に多く、他人とのコミュニケーションも、上手く取れないため、同じ会社で働き続けることが出来ませんでした。徐々に感情のコントロールが出来なくなり、気分が落ち込むことも多くなったため、精神科のあるクリニックを受診したところ、ADHDと診断されました。障害年金の申請を考え、納付状況を年金事務所で確認したところ、アルバイトを転々としていたため要件に該当しなかったため、何か方法はないかと、当センターへ相談に来られました。
相談から請求までのサポート内容
初診日が確定していれば、納付要件を満たさないので、どう頑張っても受給することは出来ません。
そこで、まずは病院に行くまでの経緯を詳しくお聞きしました。すると、精神科のあるクリニックに行く前に、近所にある掛かりつけの内科を受診したことが分かりました。早速問合せていただいたところ、カルテも残っており、初診日を特定することが出来ました。
年金事務所にて納付要件を確認したところ、ギリギリでしたが満たしており、手続きを進めていきました
結果
障害厚生年金3級の受給が決定し、年間約60万円の受給となりました。
ADHDだけでの申請は不支給になることも多いのですが、受給となり非常に嬉しかった案件です。
ADHD(注意欠陥多動性障害)を患っている依頼人から頂いたお手紙
ご相談者様からこのような手紙は、みなさまの暖かいお言葉が、私たちや今後の障害年金でお困りの方々への励みになります。
障害年金を受給出来る事になりサポートセンターの皆様や担当になって下さった柏尾さんには、とても感謝の気持ちでいっぱいです。
誠実な対応に敏速な行動私どもは、不安を感じる事がまったくありませんでした。
御社に障害年金のサポートをお願いして、本当に良かったなと思っております。
ありがとうございました。
まとめ(代表メッセージ)
この度は、当ホームページにご訪問いただき、誠にありがとうございます。
当事務所では開業以来、年金の申請手続はもちろん、さまざまな種類の書類処理、多岐にわたる内容の相談、年金記録の調査など、年金相談業務を中心に行ってまいりました。
これらの年金相談で培った経験を生かし、皆様のお力となるため大阪障害年金サポートセンターを立ち上げることとなりました。
障害年金の申請で一番大事なことは、分らない事があったり、不安を感じたりしたとき、すぐに専門家に問い合わせをする事です。遅れれば遅れるほど申請手続が困難になったり、もらえる金額に影響してくることがあります。
大阪障害年金サポートセンターでは、少しでも多くの方に「障害年金」を知っていただくため、引き続き、無料相談会などの活動を続けてまいりたいと考えております。
障害の無年金者にならないためにも、ぜひ当事務所にお気軽にご相談ください。無料でお話を聞かせて頂きます。