障害年金は働きながら受給できる?審査で見られる点と受給中の注意点
この記事の最終更新日 2026年11月5日 文責: 社会保険労務士 大平一路
障害年金は、働きながらでも受け取れる場合があります。受給の要件は「初診日」「保険料の納付」「障害の程度」の3つで、「働いていないこと」という条件はありません。ただし、障害の程度を認定する際には、仕事の内容や職場での配慮が確認されることがあります。就労状況がどこまで影響するかは、障害の種類によって異なります。
この記事の要点
- 受給要件に「働いていないこと」は含まれない
- 審査で就労状況がどう見られるかは、障害の種類によって違う
- 人工透析・人工関節など、原則の等級が定められている治療・手術がある
- 精神の障害では、働いている事実だけで日常生活能力が改善したとは判断しない
- 20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、本人の所得による支給制限がある
障害年金の受給要件に「働いていないこと」は含まれない
障害年金を受け取るための主な要件は、次の3つです。
- 初診日要件:初診日に国民年金または厚生年金に加入していたこと。障害基礎年金では、20歳前の年金制度に加入していない期間や、60歳以上65歳未満で日本国内に住み、年金制度に加入していない期間に初診日がある場合も対象になります
- 保険料納付要件:初診日の前日時点で、保険料を納めた期間や免除された期間などが所定の条件を満たしていること。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です
- 障害の程度:障害認定日などに、法令で定める障害等級に該当すること
この中に「仕事をしていないこと」という独立した条件はありません。ただし、3つ目の障害の程度は、日常生活や労働がどの程度制限されているかを基本に判断されます。そのため「働いているかどうか」は無関係ではなく、次の章で見るように判断材料の一つになることがあります。
それぞれの要件の詳しい内容は、初診日の記事、保険料納付要件の記事、障害認定日の記事で解説しています。障害年金の全体像は障害年金の基礎をご覧ください。
なお、3級の状態の基本は「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」とされています。3級は労働への制限の程度を基本とする等級で、障害厚生年金だけにあります。等級ごとの違いは障害年金の等級1級・2級・3級の違いで整理しています。
審査で就労状況はどう見られるか
障害年金の障害の程度は、障害の種類ごとに定められた「障害認定基準」に沿って認定されます。障害認定基準は、眼、肢体、精神、心疾患、腎疾患など障害の種類ごとに分かれており、確認する症状や検査、日常生活の状態は種類によって異なります。
就労状況の扱いが具体的に書かれているのが、精神の障害です。障害認定基準では、働いている事実だけで日常生活能力が改善したとは判断しないとしています。そのうえで、療養の状況、仕事の内容、勤務の実態、職場から受けている援助、ほかの従業員との意思疎通の状況などを確認して、日常生活能力を判断するとしています。
就労状況は次の書類に記載されます。
- 診断書(精神の障害用):医師が「現症時の就労状況」の欄に、勤務先、雇用形態、勤続年数、仕事の頻度、給与、仕事の内容、職場での援助や意思疎通の状況などを記載します。
- 病歴・就労状況等申立書:請求する本人(または家族等)が、職種と実際の仕事の内容を具体的に記入します。働いていない場合や休職中の場合は、その理由を記入します。
障害の種類によって「働いていること」の影響は違う
身体の障害でも、評価する点は種類によって異なります。肢体の障害では関節の動く範囲や筋力、日常生活の動作、内部の障害では症状や検査結果、生活の状態などが基準に示されています。
また、一部の治療・手術については、原則の等級が障害認定基準に定められています。
| 治療・手術 | 原則の等級 | 上の等級になる場合など |
|---|---|---|
| 人工透析療法を受けている間 | 2級 | 症状、透析中の検査結果、長期透析による合併症、生活の状況などにより、さらに上の等級になる場合がある |
| 人工骨頭・人工関節(肩・肘・手首、股・膝・足首) | 3級(片側・両側とも) | 手術後も、片側の上肢・下肢を全く使えない程度以上、または両上肢・両下肢の機能に相当程度以上の障害が残る場合は、さらに上の等級 |
| 心臓ペースメーカー・ICD(植込み型除細動器)・人工弁 | 3級 | 症状や検査結果などが上の等級の基準に当たる場合は別に評価される |
| 人工肛門・新膀胱の造設、尿路変更術 | 3級 | 人工肛門と新膀胱または尿路変更術の両方がある場合や、人工肛門に加えて常時のカテーテル留置・自己導尿が必要な完全排尿障害がある場合は2級。全身の状態などによりさらに上の等級もある |
出典:日本年金機構 障害認定基準 第12節 腎疾患による障害(リンク)、日本年金機構 第7節 第1 上肢の障害(リンク)、日本年金機構 第7節 第2 下肢の障害(リンク)、日本年金機構 第11節 心疾患による障害(リンク)、日本年金機構 第18節 その他の障害(リンク)
表は障害認定基準の原則の扱いをまとめたものです。受給には、障害の程度に加え、初診日の要件と、納付要件が必要な場合はその要件も満たす必要があります。また、3級に当たる状態だけでは、障害基礎年金(国民年金)の対象にはなりません。障害が複数ある場合は、併合の基準も関わるため、表の等級を単純に足し合わせることはできません。
精神の障害で働いている場合
精神の障害では、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」も使って等級が判定されます。ガイドラインでは、職場の支援があって安定して働けている場合、その支援がなければどうなるかも考慮するとしています。一般企業で働いている場合も、給与の額だけで決めず、勤務の実態を総合的に判断します。
就労継続支援A型・B型、障害者雇用制度による就労、就労移行支援は、相当程度の援助を受けて働いている例として示されており、1級または2級の可能性を検討するとしています。これらの制度を使わない一般企業や自営・家業でも、同じ程度の援助を受けていれば2級の可能性を検討します。ただし、これは等級を約束するものではありません。仕事を続けられているか、欠勤・早退・遅刻の状況、意思疎通の様子なども含めて判断されます。
受給中に働き始めたら年金は止まる?
働き始めたことだけを理由に支給が止まるとは限りません。給与と年金の合計額に応じて年金が調整される「在職老齢年金」は、老齢厚生年金の制度です。ただし、受給中に働く場合は、次の2点に注意が必要です。
20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には所得制限がある
20歳前の、年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金には、本人の前年の所得による支給制限があります。令和8年(2026年)10月分からの基準は次のとおりです(扶養親族がいない場合)。
| 前年の所得 | 支給 |
|---|---|
| 3,858,000円以下 | 所得による停止なし |
| 3,858,000円を超え4,918,000円以下 | 2分の1が支給停止 |
| 4,918,000円を超える | 全額が支給停止 |
扶養親族がいる場合は、1人につき38万円が限度額に加算されます(老人控除対象配偶者・老人扶養親族は48万円、特定扶養親族または19歳未満の控除対象扶養親族は63万円)。前年の所得による支給の対象期間は、10月分から翌年9月分までです。ここでいう所得は給与の総支給額(年収)とは異なります。
この所得制限は、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金のものです。20歳前でも、厚生年金に加入していた期間に初診日がある場合は、この所得制限の対象にはなりません。
更新時の診断書で状態が確認される
障害の状態の確認が必要な年には、「障害状態確認届(診断書)」で状態が確認されます。前回より障害が軽くなったと認定された場合は、年金額の減額や支給停止となることがあります。精神の障害では、前述のとおり就労状況もその判断材料になります。
働き始めた、勤務時間が増えた、職場で配慮を受けている、といった変化は、診断書を書く医師に実際の状況をそのまま伝えましょう。
働きながら請求できそうか、先に確かめたい方は1分でできる受給判定をお試しください。
働きながら請求するときに準備すること
働きながら障害年金を請求する場合は、次の順に準備を進めます。
- 初診日と保険料の納付状況を確認する(初診日、保険料納付要件)
- 仕事の内容、勤務時間・日数、欠勤や早退の状況、職場で受けている配慮や援助を書き出す
- 医師に、仕事と日常生活の実際の様子を伝えたうえで診断書を依頼する。精神の障害用の診断書には就労状況の欄がある
- 病歴・就労状況等申立書に、職種と実際の仕事の内容、休職している場合はその理由を具体的に書く
よくある質問
正社員・フルタイムで働いていても受給できますか?
受給要件に「働いていないこと」はないため、正社員やフルタイムであることだけで対象外にはなりません。たとえば人工透析は原則2級、人工関節は原則3級と、治療・手術に応じた原則の等級が定められています。一方、精神の障害などでは、仕事の内容や職場の援助を含めて障害の程度が判断されます。
障害者雇用で働いていると不利になりますか?
一律に有利・不利とはいえません。精神の障害の等級判定ガイドラインでは、障害者雇用制度による就労を相当程度の援助を受けて働いている例として示し、1級または2級の可能性を検討するとしています。実際の等級は勤務の実態や日常生活の状況を含めて判断されます。
20歳前の病気で障害基礎年金を受給しています。収入が増えると止まりますか?
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、本人の前年の所得が一定額を超えると、2分の1または全額が支給停止になります。基準額は扶養親族の数で変わります。
まとめ
障害年金の受給要件に「働いていないこと」はなく、働きながら受け取れる場合があります。ただし、障害の程度の審査で就労状況がどう見られるかは、障害の種類によって違います。人工透析や人工関節のように原則の等級が定められている治療・手術がある一方、精神の障害では仕事の内容や職場の援助まで含めて判断されます。受給中は、20歳前傷病の所得制限と、更新時の診断書に注意しましょう。
参考資料
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html)
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html)
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第2 障害認定に当たっての基本的事項(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/2.pdf)
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html)。併合は「第3 第2章 併合等認定基準」
- 日本年金機構 第8節 精神の障害(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-8.pdf)
- 日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.html)
- 日本年金機構「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140516.html)
- 日本年金機構 障害認定基準 第12節 腎疾患による障害(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-12.pdf)
- 日本年金機構 第7節 第1 上肢の障害(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-7-1.pdf)
- 日本年金機構 第7節 第2 下肢の障害(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-7-2.pdf)
- 日本年金機構 第11節 心疾患による障害(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-11.pdf)
- 日本年金機構 第18節 その他の障害(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-18.pdf)
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドラインの実施等について」(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2102&dataType=1&pageNo=1)
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html)
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20200805.html)
- 日本年金機構「障害状態確認届(診断書)が届きましたが、どうすればいいですか」(https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/jukyushatodoke/shougai/kakunintodoke/2019091901.html)
- 日本年金機構「障害年金」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html)
確認日:2026年11月5日(制度・金額は確認日時点の日本年金機構・厚生労働省の資料に基づきます)
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投稿者プロフィール
- 社会保険労務士
- 親族に知的障害を持つ者がおり、障害年金が家族の生活を支える大きな力になることを身近に実感してきました。複雑な手続きにハードルを感じる方々の力になりたいという想いから、当センターを設立しました。 専門家として一人ひとりの状況を丁寧に伺い、スムーズな受給に向けて全力でサポートいたします。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
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