自分で障害年金の遡及請求ができるか確認したい方へ
この記事の最終更新日 2026年5月19日 文責: 社会保険労務士 大平一路
過去分の障害年金を受け取れる可能性を確認するポイント
障害年金には、現在の状態について請求する方法だけでなく、過去にさかのぼって請求できる場合があります。これを一般に「遡及請求」といいます。
たとえば、初診日から1年6か月が経過した時点で、すでに障害年金の等級に該当する程度の障害状態であったにもかかわらず、当時は制度を知らずに請求していなかった場合などは、過去分の年金を受け取れる可能性があります。
ただし、遡及請求は「昔から症状があった」というだけでは認められません。
障害認定日当時の状態を、診断書や病歴・就労状況等申立書などにより、具体的に証明していく必要があります。
この記事では、障害年金の遡及請求を自分で進められるか確認したい方に向けて、実務上特に重要なポイントをわかりやすく解説します。
遡及請求とは
障害年金の遡及請求とは、現在から見て過去の「障害認定日」にさかのぼって障害年金を請求する方法です。
障害認定日とは、原則として、初診日から1年6か月を経過した日のことをいいます。
ただし、人工透析、人工関節、人工肛門、ペースメーカー装着など、傷病や治療内容によっては、1年6か月より前の日が障害認定日となる場合もあります。
遡及請求が認められると、障害認定日の翌月分から年金を受け取れる可能性がありますが、年金の支払いには時効があるため、実際に受け取れる過去分は最大5年分までとなります。
そのため、遡及請求の可能性がある場合は、できるだけ早めに確認することが大切です。
遡及請求ができるか確認する3つのポイント
遡及請求で特に重要なのは、次の3点です。
1.初診日を証明できるか
障害年金では、初診日が非常に重要です。
初診日とは、その障害の原因となった病気やけがについて、初めて医療機関の診療を受けた日のことです。
初診日によって、次のような重要事項が決まります。
- 障害基礎年金か障害厚生年金か
- 保険料納付要件を満たしているか
- 障害認定日がいつになるか
- どの時点の診断書が必要になるか
遡及請求では、現在の状態だけでなく、障害認定日当時の状態を確認する必要があります。そのため、初診日があいまいなままだと、遡及請求を進めることが難しくなります。
初診日を証明する資料としては、初診の医療機関が作成する「受診状況等証明書」が基本になります。
ただし、医療機関が廃院している、カルテが残っていないなどの事情がある場合でも、他の資料により初診日を確認できる場合があります。
たとえば、次のような資料が参考になることがあります。
- 診察券
- 医療機関や薬局の領収書
- お薬手帳
- 紹介状
- 入院記録
- 障害者手帳の申請時の診断書
- 生命保険や労災保険の診断書
- 当時の勤務先や学校の記録
「初診の病院のカルテがないから無理」とすぐに判断する必要はありません。
他の資料でどこまで補えるかを確認することが大切です。
2.障害認定日当時の診断書を取得できるか
遡及請求の最大のポイントは、障害認定日当時の診断書を取得できるかどうかです。
現在の診断書だけでは、原則として過去分の障害年金は判断されません。
遡及請求では、「障害認定日当時に、障害年金の等級に該当する状態であったか」が審査されます。
そのため、障害認定日からおおむね3か月以内の時点での症状について、医師に診断書を作成してもらう必要があります。
たとえば、初診日が令和3年4月10日の場合、原則として障害認定日は令和4年10月10日です。この場合、令和4年10月頃の状態がわかる診断書を取得できるかが重要になります。
ただし、数年前の診断書を依頼する場合、次のような理由により診断書を取得できないことがあり、遡及請求を困難にしている理由の一つです。
- 当時のカルテが残っていない
- 医師がすでに退職している
- 当時の生活状況まで詳しく記録されていない
- 通院が途切れていて、認定日頃の記録がない
- 診断書は書けるが、内容が軽くなってしまう
3.障害認定日当時に等級に該当していたか
遡及請求では、現在の症状が重いだけでは不十分であり、障害認定日当時に、障害年金の等級に該当する程度であったことが必要です。
たとえば、現在は働けない状態であっても、障害認定日当時はフルタイムで安定して働けていた場合、遡及請求が認められることは難しいと言えます。
しかし、働いていたからといって、必ず不支給になるわけではありません。重要なのは、単に「働いていたかどうか」ではなく、次のような実態です。
- 欠勤や早退が頻繁であり、通常の就労はできていなかった。
- 職場で特別な配慮を受けていた
- 家族の支援がなければ生活できなかった
- 家事、買い物、通院、金銭管理などに支障があった
- 対人関係や職場でのトラブルが多かった
- 短期間で退職や休職を繰り返していた
- 就労継続支援A型・B型、障害者雇用、短時間勤務などであった
特に精神疾患の場合、症状に波があるため、「一時的に調子がよかった時期」だけを見て判断されると、本来の生活困難さが伝わりにくいことがあります。
診断書や申立書では、日常的にどのような支障があったのかを具体的に示す必要があります。
遡及請求が難しくなりやすいケース
次のような場合は、遡及請求が難しくなることがあります。
障害認定日頃に通院していない
障害認定日当時の診断書を作成するには、当時の診療記録が必要になります。障害認定日頃に通院していない場合、医師が当時の状態を確認できず、診断書の取得は困難です。
当時の診断書の内容が軽い
遡及請求では、診断書の内容が非常に重要です。
実際には生活に大きな支障があったにもかかわらず、診断書上は軽く見える内容になっていると、障害認定日での受給が難しくなることがあります。
特に、精神疾患の診断書では、日常生活能力の判定や程度、就労状況、家族の援助の有無などが重要です。
医師に診断書を依頼する際は、当時の生活状況を整理したメモを渡すなど、正確に状況を伝える工夫が必要です。
初診日がはっきりしない
初診日が証明できない場合、そもそも障害年金の請求自体が難しくなることがあります。
ただし、初診の病院で証明が取れない場合でも、2番目以降の病院の証明や、第三者証明、診察券、領収書、健康保険の記録などにより、初診日を確認できる可能性があります。
「どの病院が初診になるのか」は非常に重要ですので、複数の医療機関を受診している場合は、通院歴を時系列で整理することをお勧めします。
障害認定日当時は比較的安定していた
遡及請求では、障害認定日当時の状態が審査されます。そのため、現在は状態が悪化していても、障害認定日当時は比較的安定していた場合、遡及請求が認められることは難しくなります。
しかし、現在の状態について請求する「事後重症請求」ができる可能性がありますので、遡及請求が難しいからといって、障害年金そのものをあきらめる必要はありません。
遡及請求と事後重症請求の違い
障害年金には、大きく分けて「認定日請求」と「事後重症請求」があります。
遡及請求は、認定日請求の一種です。障害認定日当時に等級に該当していたとして、過去にさかのぼって請求する方法です。
一方、事後重症請求は、障害認定日当時は等級に該当しなかった、または当時の診断書が取得できない場合などに、現在の状態で請求する方法です。
簡単にいうと、次のような違いがあります。
| 請求方法 | 判断される時点 | 過去分の受給 |
| 遡及請求・認定日請求 | 障害認定日当時 | 認められれば最大5年分まで可能 |
| 事後重症請求 | 現在の状態 | 請求月の翌月分から |
遡及請求ができる可能性がある場合でも、実務上は「遡及請求と事後重症請求をあわせて検討する」ことが多くあります。
なぜなら、障害認定日当時の状態が認められなかったとしても、現在の状態で受給できる可能性があるからです。
自分で遡及請求できるか確認するチェックリスト
次の項目に多く当てはまる場合は、ご自身で進められる可能性があります。
- 初診日がはっきりしている
- 初診の医療機関で受診状況等証明書を取得できそう
- 障害認定日頃に継続して通院していた
- 障害認定日頃のカルテが残っている
- 当時の診断書を医師に作成してもらえそう
- 通院歴、就労状況、生活状況を時系列で整理できる
- 年金事務所での説明を理解しながら書類を準備できる
一方で、次のような場合は、専門家に相談することをお勧めします。
- 初診日がどこになるかわからない
- 初診日の照明方法がよく分からない
- 当時は会社の配慮を受けながら働いていたが、どのように説明したらよいか分からない。
- 精神疾患、発達障害、知的障害での申請を考えており、生活状況をどのように説明したらよいか分からない
- 医師にどのように診断書を依頼すればよいかわからない
- 申請の進め方が複雑でよく分からない。
よくある誤解
働いていたら遡及請求は無理ですか?
働いていたからといって、必ず遡及請求ができないわけではありません。
もちろん、フルタイムで安定して働き、日常生活にも大きな支障がなかった場合は、障害年金の等級に該当しない可能性が高いと言えます。
しかし、欠勤が多い、短時間勤務である、職場の配慮を受けている、障害者雇用である、家族の支援がなければ生活できない、などの事情がある場合は、働いていたとしても受給の可能性を検討できる場合があります。
カルテが残っていないと初診日の証明はできませんか?
カルテがない場合、遡及請求は難しくなることがあります。ただし、必ずしもすぐにあきらめる必要はありません。
診察券、領収書、紹介状、薬局の記録、健康保険の記録、障害者手帳の診断書、第三者証明など、他の資料で補える可能性があります。
認定日頃のことを詳しく覚えていない場合はどうすればよいですか?
まずは、通院歴、入退院歴、就労状況、休職・退職の時期、家族の支援状況などを、時系列で整理することが大切です。
当時の手帳、日記、メール、給与明細、退職書類、診察券、薬の記録などが手がかりになることもあります。
ご本人だけで思い出すことが難しい場合は、ご家族に当時の様子を確認することも有効です。
遡及請求で大切なのは「当時の状態を説明すること」です
遡及請求では、現在のつらさを説明するだけでは足りません。重要なのは、障害認定日当時の状態を、できるだけ具体的に説明することです。
たとえば、精神疾患の場合であれば、次のような内容を整理します。
- 食事は自分で準備できていたか
- 入浴や着替えはできていたか
- 部屋の片付けや掃除はできていたか
- 外出や対人関係にどの程度支障があったか
- 就労していた場合、どのような配慮を受けていたか 等々
このような事情を整理したうえで、申請書を作成していくことが大切です。
まとめ
障害年金の遡及請求は、過去分の年金を受け取れる可能性がある重要な請求方法です。ただし、遡及請求が認められるためには、主に次の点を確認する必要があります。
- 初診日を証明できるか
- 障害認定日当時の診断書を取得できるか
- 障害認定日当時に等級に該当する状態だったか
- 当時の生活状況や就労状況を書面に記載できるか
遡及請求は、現在の状態だけでなく、過去の状態を証明する手続きです。そのため、通常の障害年金請求よりも難しくなることがあります。
「自分は遡及請求できる可能性があるのか知りたい」
「昔の診断書の作成をどのように依頼したらよいか分からない」
「働いていた時期があるので心配」
「申請の流れが複雑でよく分からない」
「病歴・就労状況等申立書の書き方がよく分からない」
このような場合は、早めに専門家へご相談ください。
大阪障害年金サポートセンターでは、障害年金の遡及請求について、初診日、通院歴、診断書取得の可能性、当時の生活状況などを確認し、請求できる可能性があるかを一緒に整理いたします。
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投稿者プロフィール
- 社会保険労務士
- 親族に知的障害を持つ者がおり、障害年金が家族の生活を支える大きな力になることを身近に実感してきました。複雑な手続きにハードルを感じる方々の力になりたいという想いから、当センターを設立しました。 専門家として一人ひとりの状況を丁寧に伺い、スムーズな受給に向けて全力でサポートいたします。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
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