アルコール依存症でも障害年金はもらえるのか?
この記事の最終更新日 2022年7月5日 文責: 社会保険労務士 大平一路
質問
アルコール依存症と診断され現在通院しておりますが、障害年金をもらることはできるのでしょうか?
答え
障害年金制度ではアルコール依存症による症状も対象疾患とされていますが、精神疾患を生じている場合のみが対象となります。
精神病の症状がない急性中毒や依存がみられない場合は障害年金の対象になりません。
それでは、要件を順番にご説明していきたいと思います。
●障害年金を受給するにおいては主に3つの条件があります。
1,症状が出始めて初めて病院を受診した日(初診日)が特定できる
2,初診日の前々月迄に3分の2以上の期間の保険料を納めている。または、初診日までの約1年間は年金を収めている
(この場合は、現在の年金を納めていなくても条件を満たすことになります)
3,初診日から1年6か月経過した時点、又はそれ以降で障害等級に該当している
という要件が必要になります。
●上記3の障害等級につきましては、下記のようなイメージとなります。
3級–身体の機能に労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの。
2級—身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状であって、日常生活が 著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの。
1級—身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。
もう少し具体的に表すと下記のようになります。
等級 | 障害の状態 |
1級 | 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が 著明なため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、 日常生活が著しい制限を受けるもの |
3級(障害厚生年金のみ) | ①認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、 労働が制限を受けるもの ②認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの |
おおまかにいえば、常に誰かの援助がなければ日常生活がおくれない場合が1級、日常生活・仕事に支障が出ている場合が2級、仕事に制限がある場合は3級(もしくは障害手当金)となります。
なお平成28年9月より、認定基準をより具体的に示した「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が発表され、新たに審査の基準となっています。
この等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。
■日常生活能力の判定
日常生活にどのような支障があるかを7つの場面に分けて評価したものです。
※請求者が一人暮らしをした場合、可能かどうかで判断します。
(1)適切な食事 | 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができる |
(2)身辺の清潔保持 | 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。 また、自室の清掃や片付けができる |
(3)金銭管理と買い物 | 金銭を自力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。 また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできる |
(4)通院と服薬 | 定期的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができる |
(5)他人との意思伝達 及び対人関係 | 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行える |
(6)身辺の安全保持及び 危機対応 | 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった 時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができる |
(7)社会性 | 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。 また、社会生活に必要な手続が行える |
各項目を
1 | できる |
2 | 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする |
3 | 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる |
4 | 助言や指導をしてもできない若しくは行わない |
■日常生活能力の程度
日常生活能力を総合的に評価したものです。
1 | 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。 |
2 | 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。 |
3 | 精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。 |
4 | 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。 |
5 | 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。 |
この基準をもとに具体的な日常生活状況等が考慮され、総合的に判断されることになります。
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